世界では、気候変動をはじめとする環境課題が深刻化しています。
日本国内でも異常気象による大規模自然災害が発生し大きな影響をもたらすなど、気候変動は企業にとって看過できない
状況となっています。このような中、気候変動問題をサステナビリティ経営上の重要課題であると捉え、気候変動に伴う
リスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しています。
当社は、2022年、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明するとともに、
賛同企業や金融機関が議論する場である、TCFDコンソーシアムに参画しました。
また、持続可能な未来に向けて企業活動における環境負荷の低減を加速するため、2025年、気候移行計画を策定し、2050年の温室効果ガス排出量ネットゼロを目指して取り組みをスタートしました。
今後も、TCFD提言および新たなSSBJの基準に基づき、気候変動への対応に関する情報開示を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
TCFD提言が推奨する情報開示項目
当社は、「サービス先端企業」という経営理念のもと、当社独自のノウハウ、経営資源、そして社員一人ひとりの経験を活かし、クレディセゾンだからこそできる社会の発展・課題解決に日々の事業を通じて貢献することで、今よりもっと便利で豊かな持続可能な社会をつくることを基本的な考え方としています。
気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、社員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、2021年8月からは、サステナビリティ戦略に関する活動の方向性を議論し、代表取締役に答申する機関として、「サステナビリティ推進委員会」を新たに設置しました。
2023年10 月には、より一層持続可能な経済発展に向けた事業推進・企業活動へ取り組み、それらと当社 DNA を融合し真にユニークな日本発グローバル企業を創出するため、サステナビリティ推進委員長をグローバル事業管掌の取締役(兼)専務執行役員に変更しました。また、2024年3月には「サステナビリティ推進部」を新設し、全社を挙げて取り組み強化を進めています。
委員長 | 森 航介 取締役(兼)専務執行役員 |
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委員 | 水野 克己 代表取締役(兼)社長執行役員COO |
足利 駿二 取締役(兼)常務執行役員 | |
干場 弓子 社外取締役 | |
田畑 隆紀 常務執行役員 | |
安森 一惠 常務執行役員 | |
三坂 直樹 執行役員(兼)経営企画部長 | |
若松 夕香 サステナビリティ推進部長 |
将来の気候変動が当社事業にもたらす影響について、TCFDが提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、外部環境の変化を予測し分析を実施しました。
当社は、事業活動を通じて気候変動の緩和と適応を行いながら持続的成長を目指すことが重要であると認識し、気候変動対応を経営上の重要課題と位置付けています。気候関連リスクの顕在化に伴う外部環境や業務環境の変化をあらかじめ想定し、リスク事象を洗い出すことで、当社への影響を特定・評価しています。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照しています。
影響の区分 | 純収益に対する比率 | 金額 | 事業利益に対する比率 | 金額 |
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大 | 10%以上 | 361億円~ | 30%以上 | 215億円~ |
中 | 5%以上10%未満 | 180~360億円 | 15%以上30%未満 | 107~214億円 |
小 | 5%未満 | ~179億円 | 15%未満 | ~106億円 |
※2023年度 当社グループ連結経営成績をベースに算出
<リスクにおける事業インパクト>
リスク・機会種類 | リスク・機会項目 | 事業インパクト | 事業インパクト指標 | 影響額 | 影響度 | 時間軸 | |
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リスク | 移行リスク | 政策・法規制 | 温暖化対策税等の引き上げ | 販管費への影響 | 約3.5億円 | 小 | 短期~長期 |
炭素税導入により建築資材が高騰し、不動産の取得額が増加 | 収益・資産への影響 | 約16.5億円 | 小 | 短期~長期 | |||
建築物省エネ法、ZEB等の対応 | 収益・資産への影響 | 約44.6億円 | 小 | 短期~長期 | |||
市場 | エネルギー価格の上昇 | 販管費への影響 | 約2.2億円 | 小 | 短期~長期 | ||
消費者行動の変化による製品及びサービスに対する需要減少 | 収益・資産への影響 | 約5.2億円 | 小 | 中期~長期 | |||
物理的リスク | 急性物理的リスク | 風水害激甚化による建物損壊 | 本社・営業部門・データセンター等への影響 | 約2.3億円 | 小 | 短期~長期 | |
慢性物理的リスク | 気温上昇に伴う農業・水資源・健康等への影響に起因するマクロ経済の悪化 | 貸倒コストへの影響 | 約41.4億円 | 小 | 短期~長期 | ||
平均気温上昇による熱中症頻発、冷房使用による電力コストの増加 | 販管費への影響 | 約2.2億円 | 小 | 短期~長期 |
<事業インパクトへの対応策>
リスク・機会種類 | リスク・機会項目 | 事業インパクト | 対応策 | |
---|---|---|---|---|
リスク | 移行リスク | 政策・法規制 | 温暖化対策税等の引き上げ | ・再生可能エネルギーや省エネ設備の導入を継続し、温室効果ガスの排出削減に取り組む |
炭素税導入により建築資材が 高騰し、不動産の取得額が増加 |
・サプライヤーと協働し、施工時の原材料を含むコストを抑制する | |||
建築物省エネ法、ZEB等の対応 | ||||
市場 | エネルギー価格の上昇 | ・再生可能エネルギーや省エネ設備の導入を継続する | ||
消費者行動の変化による製品及び サービスに対する需要減少 |
・ZEB、ZEHに対応した物件の取扱いを増やす ・環境認証物件開発など、脱炭素化に向けた投資を促進する |
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物理的リスク | 急性物理的リスク | 風水害激甚化による建物損壊 | ・定期的にハザードマップを確認、検証し、BCPの継続的な見直し等の対応策を実施する | |
慢性物理的リスク | 気温上昇に伴う農業・水資源・健康等への 影響に起因するマクロ経済の悪化 |
・リスクを想定した貸倒コスト影響の計測を継続する ・リスク管理の強化および適正な引当金積み増し等を行う |
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平均気温上昇による熱中症頻発、 冷房使用による電力コストの増加 |
・新築建物の高性能化、既存運営施設の設備更新等による消費電力の低減 ・勤務時間、勤務体系の柔軟化による消費電力の低減 |
<機会における事業インパクト>
リスク・機会種類 | リスク・機会項目 | 事業インパクト | 事業インパクト指標 | 影響額 | 影響度 | 時間軸 | |
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機会 | エネルギー源 | 温室効果ガス排出ゼロ | 温室効果ガス排出ゼロの達成による炭素税非課税 | 販管費への影響 | 約3.5億円 | 小 | 短期~長期 |
製品及びサービス | 環境配慮型製品及びサービス | 環境配慮型製品及びサービスの収益増加 | 収益・資産への影響 | 約5.2億円 | 小 | 中期~長期 | |
サステナブル志向の高い会員増加による営業指標への影響 | 当社では、日本の2050年カーボンニュートラル目標に向け、企業と個人の共創による脱炭素社会の実現を目指し、㈱DATAFLUCTと提携して2022年6月から日本で初めて、カーボンニュートラル視点のクレジットカード「Saison Card for becoz」の発行を開始しました。 本クレジットカードは、日常生活でのカード利用履歴に基づくCO2排出量を可視化できるほか、カーボンクレジットの購入を通じたオフセットも可能となっており、利用者の環境課題への意識向上を促進します。本クレジットカードの発行と利用促進によって、サステナブルな意識の高い将来世代による脱炭素社会の実現に向けた行動変容が行われ、CO2排出量が削減されることに加え、クレジットカードの利用による長期的な収益貢献が期待されます。 事業インパクト算出方法については精査中のため、現時点では、収益評価をしておりません。 |
- | 短期~長期 | ||||
市場 | サーキュラーエコノミー(循環型経済)の拡大による営業指標への影響 | 社会全体のサーキュラーエコノミー(循環型経済)が進み、持分法適用会社である㈱リ・セゾンを通じたリサイクルビジネス機会の増加が期待されます。 ㈱リ・セゾンでは、OA機器を中心に当社リースアップ物件の引き揚げ、再販、マテリアルリサイクルを通じた再循環・再資源化を行っており、物の残存価値を高く評価し、高効率で循環させることによる新しい二次流通市場を形成しています。マーケット拡大により、取引先の拡大、取扱商品の拡大、拠点拡大等による事業規模の拡大が見込まれます。事業インパクト算出方法については精査中のため、現時点では、収益評価をしておりません。 |
- | 短期~長期 | |||
環境配慮型商品ニーズの拡大による営業指標への影響 | EV、蓄電池、太陽光発電など、環境に配慮した商品ニーズの拡大を受け、環境配慮型リース商品への参入によるビジネス機会拡大の可能性が期待されます。また、既存商品の省エネ型製品への入れ替えなどの機会拡大が見込まれます。事業インパクト算出方法については精査中のため、現時点では、収益評価をしておりません。 | - | 中期~長期 | ||||
サステナビリティ・リンク・ローンの活用 | 環境問題や社会的課題の解決に向けたサステナビリティ活動に関する目標(SPTs)の達成により、資金調達金利の優遇などのインセンティブが受けられるサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)の活用拡大が期待されます。SLL市場は今後も拡大するとみられ、資金調達におけるコスト削減のメリットが期待されます。事業インパクト算出方法については精査中のため、現時点では、収益評価をしておりません。 | - | 中期~長期 |
<事業インパクトへの対応策>
リスク・機会種類 | リスク・機会項目 | 事業インパクト | 対応策 | |
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機会 | エネルギー源 | 温室効果ガス排出ゼロ | 温室効果ガス排出ゼロの 達成による炭素税非課税 |
・再生可能エネルギーや省エネ設備の導入を継続し、温室効果ガスの排出削減に取り組む |
製品及びサービス | 環境配慮型製品及びサービス | 環境配慮型製品及び サービスの収益増加 |
・ZEB、ZEHに対応した物件の取扱いを増やす ・環境認証物件開発など、脱炭素化に向けた投資を促進する |
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サステナブル志向の高い 会員増加による営業指標への影響 |
・カーボンオフセットやエコにつながる機能の充実、拡大により、カード発行の促進、利用活性を図る | |||
市場 | サーキュラーエコノミー(循環型経済)の 拡大による営業指標への影響 |
・取引先の拡大(当社以外の企業へ拡大)、取扱商品の拡大(主力の複合機、PC以外へ拡大)、拠点拡大(現在の4拠点から拡大)により、㈱リ・セゾンの事業規模を拡大する | ||
環境配慮型商品ニーズの 拡大による営業指標への影響 |
・リース取扱物件として環境配慮型商品を検討、導入する ・2027年末の蛍光灯生産・輸出入禁止に伴うLED照明への切り替え促進など、既存リース機器の省エネ製品への入れ替えを促進する |
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サステナビリティ・リンク・ローンの活用 | ・優遇金利の適用に向け、野心的なサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)の達成に取り組む |
※2023年度グループ連結実績をベースに一部限定的な範囲で算出
リスク管理については、「リスク管理委員会」及びリスク統括部を中心として、リスク発生の予防及び顕在化による当社への影響の極小化に努めている他、リスク統括部による各事業部のモニタリング状況につき監査部が独立した立場で定期的に検証を行う等、体制強化を図っております。そのため、「リスク管理規程」「損失の危険の管理に関する規程」及び「危機管理規程」に基づき、社員に対して定期的な社内教育・訓練を行い、リスク管理体制の維持に努めている他、毎月リスク統括部と監査部が情報連携会を開催し連携を強化しております。また、当社グループ内に内在する諸問題又は重大なリスクを伴う統制事項については、グループ戦略部を中心としてグループ各社の業務執行状況を監督するとともに、グループ各社の主管部門と情報共有を行っております。
気候変動リスクについては、「サステナビリティ推進委員会」を中心としてリスクの極小化と機会獲得に向けた方針・戦略の策定することに加えて、取り組みに関するモニタリング管理を行う体制になっています。
サステナビリティ推進委員会の事務局であるサステナビリティ推進部が中心となり、監査部、リスク統括部、経営企画部、財務経理部や総務部と連携しながら定期的に各種リスク・機会の見直しを実施します。
当社は、Scope測定対象とする連結グループ各社のうち、連結事業年度の純収益の95%超を占める7社にて温室効果ガス排出量を測定しています。
当社では、2030年に向けた温室効果ガス排出削減目標について、パリ協定で定める 「1.5℃目標」の水準と整合する内容として、SBTi(Science Based Targets initiative)の認定を取得しました。
<温室効果ガス排出目標(2030年度)>
・Scope1,2 の温室効果ガス排出量を 44%削減する(基準年 2020年度)
・Scope3 の温室効果ガス排出量を25%削減する(基準年 2020年度)
今後も、事業活動における温室効果ガス排出量の削減に取り組み、脱炭素社会への移行を事業機会ととらえ、自社の事業成長と環境負荷低減の両立を目指します。
単位:t-CO2 | ||||||||||
実績 | 目標 | |||||||||
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2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2025年度 | 2028年度 | 2030年度 | ||||
Scope1 | 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 | 1,023 | 388 | 342 | 643 | 2020年度比 22%削減 |
2020年度比 35%削減 |
2020年度比 44%削減 |
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Scope2 (マーケット基準) |
他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 | 17,540 | 17,847 | 17,908 | 11,976 | |||||
Scope2 (ロケーション基準) |
17,856 | 17,947 | 17,712 | 14,116 | ||||||
Scope1 + Scope2(マーケット基準) 小計 | 18,563 | 18,235 | 18,250 | 12,619 | 14,521 | 12,096 | 10,479 | |||
Scope1 + Scope2(ロケーション基準) 小計 | 18,879 | 18,334 | 18,054 | 14,758 | 14,763 | 12,243 | 10,663 | |||
カテゴリー1 | 購入した製品・サービス | 81,712 | 65,355 | 85,128 | 98,567 | 2020年度比 12.5%削減 |
2020年度比 20%削減 |
2020年度比 25%削減 |
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カテゴリー2 | 資本財 | 323,542 | 332,878 | 403,120 | 456,894 | |||||
カテゴリー3 | Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 | 3,071 | 2,999 | 2,963 | 2,485 | |||||
カテゴリー4 | 輸送、配送(上流) | - | - | - | - | |||||
カテゴリー5 | 事業から出る廃棄物 | 132 | 277 | 380 | 318 | |||||
カテゴリー6 | 出張 | 781 | 1,133 | 1,533 | 1,385 | |||||
カテゴリー7 | 雇用者の通勤 | 1,587 | 2,295 | 2,537 | 2,830 | |||||
カテゴリー8 | リース資産(上流) | - | - | 6 | 1,777 | |||||
カテゴリー9 | 輸送、配送(下流) | - | - | - | - | |||||
カテゴリー10 | 販売した製品の加工 | - | - | - | - | |||||
カテゴリー11 | 販売した製品の使用 | 47,510 | 60,347 | 63,392 | 38,347 | |||||
カテゴリー12 | 販売した製品の廃棄 | 2,779 | 2,573 | 2,808 | 1,731 | |||||
カテゴリー13 | リース資産(下流) | 262,955 | 251,332 | 252,721 | 247,719 | |||||
カテゴリー14 | フランチャイズ | - | - | - | - | |||||
カテゴリー15 | 投資 | - | - | - | - | |||||
Scope3 | Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) | 724,069 | 719,188 | 814,588 | 852,053 | 633,560 | 579,255 | 543,052 | ||
Scope1,2,3 合計(サプライチェーン排出量) | 742,632 | 737,423 | 832,838 | 864,672 | 648,081 | 591,351 | 553,531 |
※カテゴリー4:該当する活動は他のカテゴリに計上済み
※カテゴリー8:国内における該当する活動はScope1,2に計上済み
※カテゴリー9,10,14:該当する活動なし
※カテゴリー15:今後算定検討
・ 2023年度は、リース事業および不動産関連事業の事業拡大に伴い、Scope3が前年度よりも増加しています。
・ 2022年度より、グループに Kisetsu Saison Finance(India)Pvt. Ltd.を追加した7社の測定結果を開示しています。
・ 2030年度の目標はSBTi(Science Based Targets Initiative)認定に基づくものです。
・ SBTi 認定の取得に伴い経過年の算定値を一部再計算しています。
・全てのGHGの合計排出量を計算していますが、当社グループでは僅少発生分を除いたCO2のみをカウントしています。
・ Scope1,2,3の算定およびTCFD開示フレームワークに基づく各種取り組みは、(株)ウェイストボックスの協力を得ています。