TCFD提言に沿った情報開示

世界では、気候変動をはじめとする環境課題が深刻化しています。
日本国内でも異常気象による大規模自然災害が発生し大きな影響をもたらすなど、気候変動は企業にとって看過できない
状況となっています。このような中、気候変動問題をサステナビリティ経営上の重要課題であると捉え、気候変動に伴う
リスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しています。
当社は、2022年、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明するとともに、
賛同企業や金融機関が議論する場である、TCFDコンソーシアムに参画しました。
今後も、TCFD提言に基づき、気候変動への対応に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」についての
情報開示を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

TCFD提言が推奨する情報開示項目

ガバナンス

2021年8月、サステナビリティ推進委員会を新設し
気候変動に関する活動を推進

当社は、「サービス先端企業」という経営理念のもと、当社独自のノウハウ、経営資源、そして社員一人ひとりの経験を活かし、クレディセゾンだからこそできる社会の発展・課題解決に日々の事業を通じて貢献することで、今よりもっと便利で豊かな持続可能な社会をつくることを基本的な考え方としています。

気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、社員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、2021年8月からは、サステナビリティ戦略に関する活動の方向性を議論し、代表取締役に答申する機関として、「サステナビリティ推進委員会」を新たに設置しました。

サステナビリティ活動に関する代表取締役の諮問機関となる本委員会は、持続可能な社会の実現に向けて、グループ全体で事業を通じた社会・環境課題解決への取り組みを強化しています。代表取締役(兼)社長執行役員COOの参画や、社内外、ジェンダー平等、またグローバル視点を持ったメンバーで構成し、多様な意見の交換を図っています。
本委員会には「気候変動戦略推進WG(※1)」「DE&I推進WG」「Social Impact推進WG」の3つのWGがあり、本委員会と報告・指示関係のもと、定期的にグループ全体を通じたサステナビリティ戦略及び取り組みを代表取締役に答申の上、必要に応じて取締役会に報告しています。本委員会、気候変動戦略推進WG、DE&I推進WGにおいては、2021年9月より定期的に開催することで議論を進めており、Social Impact推進WGにおいては2023年2月に発足し、他のWG同様、議論を深耕させています。
また、持続可能な経済発展に向けた事業推進・企業活動へ取り組み、それらと当社 DNA を融合し真にユニークな日本発グローバル企業を創出するため、サステナビリティ推進委員長をグローバル事業管掌の取締役(兼)専務執行役員に変更、また、2024年3月には「サステナビリティ推進部」を新設いたしました。

  • ※1 ワーキンググループ(以下同様)

<サステナビリティ推進委員会 体制図>

体制図

<サステナビリティ推進委員会 メンバー>

委員長 森 航介 取締役(兼)専務執行役員
委員 水野 克己 代表取締役(兼)社長執行役員COO
干場 弓子 社外取締役
田畑 隆紀 常務執行役員
安森 一惠 常務執行役員
三坂 直樹 執行役員(兼)経営企画部長
若松 夕香 サステナビリティ推進部長

サステナビリティ推進委員会メンバーのポイント

  • ・委員長は、グローバルな視点から持続可能な経済発展に向けた事業推進・企業活動に取り組むことができる取締役であること
  • ・代表取締役(兼)社長執行役員COOも参画していること
  • ・ブランディング戦略部、経営企画部、戦略人事部、サステナビリティ推進部、グローバル事業部等をはじめとする多様な部門を担当するメンバーであること
  • ・ジェンダー平等
  • ・客観的・中立的な立場で意見をいただくために、社外取締役も委員会メンバーであること
  • ・専門分野において助言や提言をいただくために第三者機関にも参画いただくこと

戦略

将来の気候変動が当社事業にもたらす影響について、TCFDが提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、外部環境の変化を予測し分析を実施しました。

当社は、事業活動を通じて気候変動の緩和と適応を行いながら持続的成長を目指すことが重要であると認識し、気候変動対応を経営上の重要課題と位置付けています。気候関連リスクの顕在化に伴う外部環境や業務環境の変化をあらかじめ想定し、リスク事象を洗い出すことで、当社への影響を特定・評価しています。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照しています。

・分析対象事業範囲の特定

  • グループ連結で実施しています。

・リスク項目・機会項目の特定

  • TCFD提言では、気候変動リスクを移行リスク・物理的リスクの2つのカテゴリに分類し、本分類に基づきリスク項目の洗い出しを行い、当社事業と関連性が高いと想定される主要なリスク項目と機会項目を特定しました。

・評価・管理のプロセス

  • 気候変動戦略推進WGが中心となり、リスクの洗い出し、影響評価、対応策を検討しています。サステナビリティ推進委員会は、リスク対応・機会獲得方針、戦略策定、取り組みのモニタリングを実施し、取締役会は必要に応じサステナビリティ推進委員会から報告を受け監督しています。
  • ※気候変動戦略推進WG構成部門:グループ戦略部、経営企画部、財務経理部、総務部

・時間軸の定義(短期・中期・長期)

  • 気候変動の影響はさらに長い時間をかけて顕在化していく性質のものであること、パリ協定と日本政府の掲げる目標年等を踏まえて、短期・中期・長期の時間軸を次の通りとしました。
  • ※短期(現在~2025年) / 中期(2030年) / 長期(2050年)

・重要度の定義(大・中・小)

  • 気候変動の財務影響を評価するにあたり、営業収益、経常利益に与える影響において、影響の区分は、金融商品取引所の適時開示基準の「重要事項」のうち、業績予想の修正に関する基準を準用し、シナリオ分析の対象範囲はグループ連結であるため営業収益予想値の10%増減、経常利益予想値の30%増減を影響「大」としました。
影響の区分 収益に対する比率 金額 利益に対する比率 金額
10%以上 322億円~ 30%以上 182億円~
5%以上10%未満 161~321億円 15%以上30%未満 91~181億円
5%未満 ~160億円 15%未満 ~90億円

※2022年度 当社グループ連結経営成績をベースに算出

リスク・
機会種類
リスク・機会項目 事業インパクト 事業インパクト指標 影響額 影響度 時間軸
リスク 移行リスク 政策・法規制 温暖化対策税等の
引き上げ
販管費への影響 約3.8億円 短期~長期
炭素税導入により
建築資材が高騰し、
不動産の取得額が増加
収益・資産への影響 約15.6億円 短期~長期
建築物省エネ法、
ZEB等の対応
収益・資産への影響 約32.5億円 短期~長期
市場 エネルギー価格の上昇 販管費への影響 約2.1億円 短期~長期
消費者行動の変化による
製品及びサービスに対する
需要減少
収益・資産への影響 約2.7億円 長期
物理的リスク 急性物理的リスク 風水害激甚化による
建物損壊、休業による
売上減少
本社・営業部門・
データセンター等の
資産及び事業収益への影響
約2.5億円 短期~長期
慢性物理的リスク 気温上昇に伴う
農業・水資源・健康等への
影響に起因する
マクロ経済の悪化
貸倒コストへの影響 約40億円 短期~長期
平均気温上昇による
熱中症頻発、
冷房使用による
電力コストの増加
販管費への影響 約1.1億円 短期~長期
 
機会 エネルギー源 温室効果ガス排出ゼロ 温室効果ガス排出ゼロの
達成による
炭素税非課税
販管費への影響 約3.8億円 短期~長期
市場 サステナブル志向の
高い会員増加による
営業指標への影響
当社では、日本の2050年カーボンニュートラル目標に向け、企業と個人の共創による脱炭素社会の実現を目指し、2022年6月から日本で初めて、カーボンニュートラル視点のクレジットカード「Saison Card for becoz(=be co2 zero)」の発行を開始しました。
カード会員は、㈱DATAFLUCTのアプリケーションプラットフォーム内で、カードの決済データからご利用カテゴリ毎のCO2排出量が可視化され、会員による脱炭素に向けた行動変容の動機付けが行われます。
日常生活での購買活動を通じてCO2排出量を可視化し、利用者の環境課題への意識向上につなげようとする姿勢が評価され2023年3月、日本経済新聞社主催の「NIKKEI脱炭素アワード2022」(プロジェクト部門)大賞と、FINOLAB主催の金融イノベーションを表彰する「JapanFinancialInnovationAward 2023」の大賞を受賞しました。
カード発行後1年を迎えた2023年6月には、ご利用額に応じて、クレディセゾンが運営する赤城自然園(群馬県渋川市)の環境保全活動に参画できる取り組みもスタートさせるなど、サービスの拡充を図っています。
本クレジットカードの発行と利用促進により、サステナブルな意識の高い将来世代が、脱炭素社会の実現に向け行動変容が行われCO2排出量が削減されることに加え、クレジットカードの利用による長期的な収益貢献が期待されます。また、現時点では収益評価をしておりません。
- 短期~長期

※2022年度グループ連結実績をベースに一部限定的な範囲で算出

リスク管理

リスク管理については、「リスク管理委員会」及びリスク統括部を中心として、リスク発生の予防及び顕在化による当社への影響の極小化に努めています。そのため、「リスク管理規程」、「損失の危険の管理に関する規程」及び「危機管理規程」に基づき、社員に対して定期的な社内教育・訓練を行い、リスク管理体制の維持に努めています。また、当社グループ内に内在する諸問題又は重大なリスクを伴う統制事項については、グループ戦略部を中心としてグループ各社の業務執行状況を監督するとともに、各社の主管部門と情報共有を行っています。

気候変動リスクについては、「サステナビリティ推進委員会」を中心としてリスクの極小化と機会獲得に向けた方針・戦略の策定することに加えて、取り組みに関するモニタリング管理を行う体制になっています。
サステナビリティ推進委員会の事務局であるサステナビリティ推進部が中心となり、監査部、経営企画部、リスク統括部や戦略人事部と連携しながら定期的に各種リスク・機会の見直しを実施します。

指標と目標

  • 連結グループ各社
単位:t-CO2
実績 目標 目標
2020年度 2021年度 2022年度 2025年度 2020年度比
21%削減
2030年度 2020年度比
42%削減
  Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 1,023 388 341 808 593
Scope2
(マーケット基準)
他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 17,540 17,847 17,854 13,857 10,173
Scope2
(ロケーション基準)
17,856 17,947 17,658 14,106 10,356
Scope1 + Scope2(マーケット基準) 小計 18,563 18,235 18,195 14,665 10,767
Scope1 + Scope2(ロケーション基準) 小計 18,879 18,334 17,999 14,914 10,950
カテゴリー1 購入した製品・サービス 81,712 65,355 74,710 71,498 2020年度比
12.5%削減
61,284 2020年度比
25%削減
カテゴリー2 資本財 323,542 332,878 402,507 283,099 242,657
カテゴリー3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 3,071 2,999 2,952 2,687 2,303
カテゴリー4 輸送、配送(上流)
カテゴリー5 事業から出る廃棄物 132 277 380 116 99
カテゴリー6 出張 781 1,133 1,046 684 586
カテゴリー7 雇用者の通勤 1,587 2,295 2,173 1,388 1,190
カテゴリー8 リース資産(上流)
カテゴリー9 輸送、配送(下流)
カテゴリー10 販売した製品の加工
カテゴリー11 販売した製品の使用 47,510 60,347 63,392 41,571 35,633
カテゴリー12 販売した製品の廃棄 9,355 7,553 2,808 8,185 7,016
カテゴリー13 リース資産(下流) 262,955 251,332 252,721 230,085 197,216
カテゴリー14 フランチャイズ
カテゴリー15 投資
Scope3 Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) 730,645 724,168 802,691 639,314 547,984
Scope1,2,3 合計(サプライチェーン排出量) 749,207 742,403 820,886 653,979 558,750

【2022年度】Scope3の増加要因
リース事業および不動産関連事業の事業拡大に伴い、排出量が前年度よりも増加しています。

※C4:該当する活動は他のカテゴリに計上済
※C8:該当する活動はScope1,2に計上済
※C9,10,14:該当する活動なし
※C15:今後算定検討
※SBT(Science Based Targets)を参考に目標設定
※Scope1,2,3の算定及びTCFD開示フレームワークに基づく各種取り組みは、(株)ウェイストボックスの協力を得ています。