財務資本政策担当役員インタビュー

金利上昇に伴う調整を図りながら
確実に中期経営目標への
到達を図っていく

常務執行役員 CFO
広報室、財務経理部、クレジット・リース事業部 管掌
(兼)クレジット・リース事業部長

根岸 正樹

事業環境変化を踏まえて

2024年、金利ある世界への転換が進み事業環境が大きく変化しました。現行の中期経営計画を策定する際にも金利上昇は織り込んでいましたが、実際には想定を上回るスピードで進行しており、前提条件の変化を踏まえた事業計画や各種施策の優先順位、ポートフォリオなどの見直しを議論しています。
2024年度の業績を振り返ると、ペイメント事業は構造改革が順調に進み、ファイナンス事業も、クレディセゾン、セゾンファンデックス、スルガ銀行ともに好調で業績を伸ばしました。グローバル事業は当初の期待値には届かなかったものの、この先の事業成長が確実に見えてきています。

事業環境変化を踏まえて

2024年、金利ある世界への転換が進み事業環境が大きく変化しました。現行の中期経営計画を策定する際にも金利上昇は織り込んでいましたが、実際には想定を上回るスピードで進行しており、前提条件の変化を踏まえた事業計画や各種施策の優先順位、ポートフォリオなどの見直しを議論しています。
2024年度の業績を振り返ると、ペイメント事業は構造改革が順調に進み、ファイナンス事業も、クレディセゾン、セゾンファンデックス、スルガ銀行ともに好調で業績を伸ばしました。グローバル事業は当初の期待値には届かなかったものの、この先の事業成長が確実に見えてきています。

各事業の成長が確信できる結果を踏まえ、事業計画の見直しにおいても、さらなる金利上昇を想定しながら、既存の事業戦略をどう前向きに進化させるかという視点で、気持ちに多少の余裕を持ち、前向きに議論を進められています。
この前向きさを保てる要因としては、かつてのペイメント事業一本足の構造から脱却し、ファイナンス事業が2本目の柱として確立した後に金利上昇のタイミングを迎えられたことが大きいと実感します。ファイナンス事業はほとんどが変動金利資産であり、金利上昇に対して高い耐性を持っていますし、ペイメント事業についてもここ数年のシステム化・デジタル化で事業運営体制のスリム化・効率化が着実に進んでおり、その結果、金利上昇によるコスト増にもより柔軟に対応できるポートフォリオが構築されつつあり、各事業が金利上昇を過度に懸念することなく挑戦を続けられる状態にあると認識しています。
事業環境が変化しても、現中計においてはペイメント、ファイナンス、グローバルの3つの柱の事業を中心に進めていきます。中計初年度では、国内事業にも強い成長機会を確認できているため、グローバル事業への積極的な投資を進めながら、その一部を国内にも振り向け、国内の事業成長に資する投資機会も模索していきます。例えばスルガ銀行とのアライアンスでは、バンクとノンバンクの相性の良さに加え、両社が持つ審査力や営業のスピードを活かすことで、良質な資産の積み増しが実現できています。これは当社単独では得がたい、新たな価値を生み出す成長機会であると感じています。

連結実績

確度が高まった事業利益目標の達成

2024年度の連結事業利益は936億円となりましたが、一過性要因を除いた実力値は840億円だと見ています。2025年度の事業利益目標は、この実力値から約120億円増益の960億円としており、これを達成できれば、2026年度は中計目標の1,000億円超の確実な達成が視野に入ります。2025年度におけるグローバル事業は、インドの健全な成長継続と、次の成長の柱であるブラジルでの具体的な成長戦略の具体化が重要なテーマとなります。ペイメント事業では、構造改革を進めながら、準富裕層以上の個人顧客と個人事業主(SME)を主要ターゲットとするプレミアム戦略のもと、顧客拡大と、調達コストが上昇する環境変化に対応した商品開発・改定を進めています。
ファイナンス事業では、金利環境の変化を踏まえて、オンバランスとオフバランスの両面での成長を目指します。当社のファイナンス事業は、大きく分けて信用保証事業と、不動産ファイナンス事業の2つに分類されます。信用保証事業は、エンドユーザーが返済不能となった場合に当社が金融機関に返済するビジネスで、一定の弁済リスクを伴うものの、当社のバランスシート(以下、BS)に対する負担が軽く、フィーで稼ぐビジネスです。こうしたオフバランスのビジネスで成長機会を窺い、そこで確固たる収益を拡大できれば、BSを膨らませるオンバランスのビジネスへの過度な依存を避けつつ持続的な成長が実現できると考えます。
もちろんBSへの負担が軽いビジネスでも、保証履行が発生すれば、当社も瞬間的に影響を受ける可能性はあります。そのためリスクの上限(キャップ)を意識したハンドリングや、年度ごとの事業、投資判断の議論も必要です。特に不動産担保ローンへの信用保証もあるため、オフバランスのメリットを享受しながらも、その裏付けとなる不動産市場の動向を常に注視し、踏み込むべき程度を慎重に判断する必要があります。
また財務的な視点で見ると、すでに有利子負債残高が3兆円超と借入規模が大きくなっています。事業側の利益率も意識しつつ、成長投資(M&A含む)の積極性と資本効率とのバランスを取りながら、必要であればボリュームを取りにいかなければならなくなる点は課題です。一定程度信用リスクに重なるスプレッドも変化してくる可能性があるので、BSを膨らませずに稼ぐことへの意識は重要だと考えています。

2030年を見据えた事業成長について

水野社長は、個人的な思いとして2030年度を目途に事業利益が2,000億円規模の事業会社にしたいと発信しています。この件に関して資本市場からは、どのように実現するのかとの問い合わせも多く受けます。トップが抱く野心的な目標を社外に発信したことを、私自身は前向きに捉えています。私も新たに挑戦心を抱きましたし、社内にも良い影響を及ぼしていると感じます。
もちろん、オーガニックな成長のみで考えると、2030年度の事業利益2,000億円の達成には高いハードルがあるのも事実です。しかしここ数年、社員の意識が大きくポジティブに変化してきたと感じています。前中計では事業利益700億円の目標を1年前倒しで達成し、現中計でも最終年度の1,000億円超目標の達成確度が初年度から高まっています。こうした中で、当初は野心的だと社内外で捉えられていた数値に現実味を持たせてきたことは社員の自信にもつながっており、知恵を絞りながらチャレンジをしていこうという風土もより活性化していると感じます。

2030年に目指す姿

2030年までの成長の姿の中で極めて重要なのがグローバル事業です。2019年のライセンス取得以降、急成長を遂げているインド事業のほか、次の柱としてブラジル事業への投資を加速する必要があります。インド事業は急成長する過程で計画通りに進まなかった部分もありましたが、今後は改めてリスクマネジメントとガバナンスを強化しながら、攻めと守りの両面から成長を図っていきます。また、インド国内の金融機関約40行と取引し、社債調達も行うなど、基本的に現地で資金調達を完結しているインド事業は、これまでの実績により高い信用力を確立しており、今後も安定的かつ低コストでの資金調達が可能だと見ています。
ペイメント事業は再び成長ステージに入り、ここ数年のプレミアム戦略も軌道に乗りつつあります。前述したように、今後は、ターゲット顧客の明確化と環境変化に対応したプロダクト開発を軸に、ビジネスモデルの構築を進めます。ファイナンス事業では、クレディセゾン、セゾンファンデックス、スルガ銀行がそれぞれの強みを活かし、事業機会の獲得に注力していきます。

資本効率や株価を意識した経営

現中計の策定時点から社内では相当に資本効率に関する議論を深めてきました。当社の資本コストは概ね8 ~11%のレンジと想定し、中計最終年度ではROE9.5%との目標を掲げており、2024年度末のROEは9.4%となりました。2025年度末は、利益の増加に伴い資本が厚くなりますが、200億円相当の自己株式の取得で9.4%の水準を維持できると考え、ROEは横ばいを想定しています。もちろん、資本を減らしてROEの帳尻を合わせることは本質的ではなく、2026年度に向けて、より生産的な利益成長を図ることでROE9.5%を上回る姿を目指します。また9.5%は通過点です。各事業の生産性を高め、できるだけ近い将来に10%を超えられるようにしたいです。
PBRについては依然として1倍を下回る水準にあり、資本効率の改善が求められています。PBR1倍超の実現に向けて重要なことはROEベースでの資本効率を高めることです。過去には低ROEで業績のボラティリティが大きい時期もありましたが、まずはしっかりと業績を安定的かつ持続的に成長させ、同時に、結果として資本効率を向上させることで、株価にも良い影響を与えたいと考えています。

成長投資と株主還元

成長投資に関しては、オーガニックな成長に加え、インオーガニックな成長も併せて考えています。当社は「総合生活サービスグループ」として、さまざまなアライアンスで緩やかな経済圏の形成を標榜していますが、「金融をコア」とする点を大切にしながら、インオーガニックな成長に資するM&Aは常に意識しています。
新規の投資に際しては、案件ごとに一定の時間軸での定量目標と撤退基準を定め、その後、定期的な進捗管理を行っています。当初計画から下方に乖離した案件は原則撤退を検討しますが、要因分析を行い、回復の見通しが立つ場合はすぐに撤退はせず、改めて時限を設けて次のチェックポイントで検証しています。
株主還元に関しては、安定的かつ継続的な配当を基本とする方針に変更はありません。持続的な成長を前提とした上で、可能な限り増配も続けたいと考えます。また株主への還元と同時に、成長を支える社員への還元も拡充していきたいです。

ステークホルダーの皆さまに向けて

根岸 正樹 企業は持続的に利益成長をし続けなければなりません。そのためには、環境変化に合わせて自ら果敢に変化し続けることが大事です。 そうした考え方に立てば、2030年に向けた事業ポートフォリオは、今後の変化や挑戦を通じて進化していく可能性があると捉えています。 当社はペイメント事業に加え、ファイナンス事業やグローバル事業を取り込みながら絶えず進化を続けてきました。今後も変化を続ける当社グループの姿を見守っていただき、引き続きご支援を賜れれば幸いです。