CSDX戦略担当役員インタビュー
取締役(兼)専務執行役員CDO(兼)CTO
グループDX戦略、CSDX推進部、
情報セキュリティ統括部、
カスタマーサクセス事業部 管掌
小野 和俊
CSAXへの挑戦
(Credit Saison AI Transformation)
2022年にChatGPTが社会に衝撃を与えて以来、生成AIによって従来の仕事や生活の仕方が劇的かつ急速に変化し続けています。当社では2019年よりDXに本格着手し、内製開発組織をゼロから立ち上げて200名規模にまで拡大しました。フロントエンドはもちろん、基幹系システムも含め、多数のシステムを内製開発してきました。内製開発という強力な武器を手に入れた私たちが現在目指しているのは、AIによる業務変革です。CSDXのPhase4として掲げるCSAXでは、「AIを前提として全社の業務を再設計する」ことを目指します。
2022年にChatGPTが社会に衝撃を与えて以来、生成AIによって従来の仕事や生活の仕方が劇的かつ急速に変化し続けています。当社では2019年よりDXに本格着手し、内製開発組織をゼロから立ち上げて200名規模にまで拡大しました。フロントエンドはもちろん、基幹系システムも含め、多数のシステムを内製開発してきました。内製開発という強力な武器を手に入れた私たちが現在目指しているのは、AIによる業務変革です。CSDXのPhase4として掲げるCSAXでは、「AIを前提として全社の業務を再設計する」ことを目指します。
例えば、コールセンターの業務を考えてみます。電話やスマホアプリ、メールなど、さまざまなチャネルを通じたお客様の問い合わせ内容が受付を担当するAIによって解釈され、関連する各システムのAPIが呼び出され、その結果が生成AIによって要約され、オペレーターの最終確認を経てお客様に回答される――このようなコールセンターが実現すれば、事業の収益構造に大きなインパクトを与える可能性があります。このようなシステムを実現するには、既存システムが「社員が使える」だけでなく「システムからも使える(他システムからAPIで呼び出し可能)」である必要があります。現在、内製開発によってこうしたAPI化が着々と進んでおり、内製開発の取り組みとAI利活用とが相互に結びつくことで、掛け算の効果を発揮することが期待できます。
総合職社員の日々の業務についても、AI利活用により大きな効果が見込めます。すでに社内向けにリリースされている「SAISON ASSIST」(社内用ChatGPT)には毎月社員から6万件近い相談が寄せられていますが、SAISON ASSISTには新卒の社員一人分程度のコストしかかかっていません。現在、生成AIの利活用コンテストを開催するなどして業務改善事例を収集していますが、多くの業務にAIによって改善できる余地があると感じており、「AIを前提として全社の業務を再設計する」ことで全社の業務効率を劇的に改善していくことを目指します。
2024年度の振り返り
2024年度も様々な活動に取り組んできましたが、中でも特筆すべき活動が2つありました。
ひとつは、従来から推進していた手作業業務の自動化が一段と進み、DXに本格的に着手した2019年と比べて、160万時間(社員800人分)の業務が自動化されたことです。
もうひとつは、クレジットカード事業基幹システムの外販に成功したことです。当社のクレジットカード基幹システムは2018年に完成し、小さな障害はありつつも基本的に安定稼働してきました。さらに、2022年にはこの基幹システムを包み込む社内API基盤であるオープンGWの内製化とクラウド化に成功したことで、迅速な機能追加や修正、クラウドならではの伸縮性の高いシステムリソースの調整が可能になりました。このように安定性とスピード感の両立(当社が掲げているバイモーダル戦略)が実を結び、案件受注と受注システムの完成に至ったことは大きなトピックだと考えています。
生産性を向上させるCSDX戦略
内製開発組織であるテクノロジーセンターを立ち上げた2019年以降、私たちはお客様の新たな体験を創出すること(CX:Customer Experience)と、社員の体験を転換すること(EX:Employee Experience)を目的にCSDX戦略を策定し、DX推進に取り組んでまいりました。
2024年度にはCSDX戦略はPhase3を迎え、業務プロセスの完全デジタル化を目標に取り組んだ結果、業務削減時間161万時間(2019年度〜2024年度累計)、紙削減102トン(2019年度比)を達成することができました。
2025年度は、CSDX戦略をPhase4に進め、AIを成長エンジンとして価値創造を加速させていきます。これまでのAI活用事例としては、全社員が利用可能な社内専用ChatGPT、社内問い合わせSlackチャットボット、議事録作成システムなどを内製開発し、EX向上に努めてきました。
今後はこれをさらに飛躍させるため、お客様との接点が近いコールセンター業務を支える音声基盤システムの内製化に取り組み、すべてのチャネルからのお客様対応をシームレスに集約するとともに、高度な生成AI技術の導入により、より実践的な効果を上げることに注力していきます。
AIによる業務変革に向けて
生成AI推進のためのCSAXプロジェクトの立ち上げ
当社は生成AIの全社的な活用を推進するため、2025年4月に「生成AI推進プロジェクト」を立ち上げました。本プロジェクトでは、トップダウンによる重点領域へのAI導入の加速と、ボトムアップによる現場主導の活用促進という、二つのアプローチを並行して進めています。
まず、重点領域へのAI導入では、内製開発部門とAI事務局が連携し、組織横断で業務プロセスの改革に取り組んでいます。経営層と協議の上、選定した領域において、生成AIを前提とした業務への転換を推進します。また、セキュリティルールなどを整備し、安全かつ安心してAIを利活用できる環境を構築します。一方、ボトムアップによる現場主導のAI活用の推進では、各部門から選抜したリーダーを中心とし、自部門の課題解決を目標に業務に適したユースケースを実装していきます。それらをAI事務局が収集し、特に有効な取り組みについては、テンプレート化して横展開します。また、必要な知識やスキルに合わせた学習コンテンツやハッカソンなどを開催し、スキル向上とAI活用文化の醸成を後押ししていく予定です。
トップダウンとボトムアップの両面から推進することで、AIを企業変革の中核に据え、持続的な成長を目指していきます。
全社員によるAIワーカー化
ボトムアップによる推進体制を強化するため、現場での活用をより深め、組織全体へと波及させるための新たな取り組みを展開します。生成AIツールの活用においては、これまで個人レベルでの業務効率化にとどまることが多く、チーム単位での活用や、優れた事例の全社展開が進みにくいという課題がありました。
そこで、新たに少人数チームによる「生成AIワークショップ」を導入し、個々のノウハウを共通のユースケースへ集約する仕組みを構築します。具体的には、各チームが自部門の業務を対象に、1か月間~数か月間の期間を設定して、「企画 → 実装 → 検証」のサイクルを実行していきます。AI事務局はその取り組みの中から削減時間の効果性の高い案件や、組織横断で展開が可能な再現性の高い成功事例を選定し、テンプレート化して社内に展開していきます。
このように、これまで個人単位で散在していた生成AIの活用を、チームによる協働と仕組みによる標準化によって体系化し、組織全体の生産性向上を実現してまいります。


