社長メッセージ
2024年度は過去最高益を達成
金利ある世界を迎えた今、
「選択と集中」で企業成長を加速する
代表取締役(兼)社長執行役員COO
水野 克己
GLOBAL NEO FINANCE COMPANYに
向けて
クレディセゾンには、創業当時からの挑戦と変革のDNAが今も受け継がれています。当社は今、海外で、適切な金融サービスが受けられない人々や企業(アンダーサーブド層)に対してファイナンスサービスを提供するファイナンシャル・インクルージョンを進めていますが、この考え方は、当社が1980年代に国内で女性や若者に対し、年会費無料で即日カードを発行してきた当時の思想と通底しています。当時、上場企業に長年勤める男性くらいしかクレジットカードを持つことができなかった日本で、女性、特に主婦層への金融サービス開放を実現したことは当時のファイナンシャル・インクルージョンだったと自負していますし、当社は常に、お客様を起点に、その困りごとを解決することで価値を創出してきました。2024年5月に公表した2030年に目指す姿「GLOBAL NEO FINANCE COMPANY~金融をコアとしたグローバルな総合生活サービスグループ~」は、当時提唱していた「生活総合産業」をベースに、金融を軸にグローバルでも発展していくという思いも加えた、当社のDNAを受け継ぐビジョンとなっています。
GLOBAL NEO FINANCE COMPANYに
向けて
クレディセゾンには、創業当時からの挑戦と変革のDNAが今も受け継がれています。当社は今、海外で、適切な金融サービスが受けられない人々や企業(アンダーサーブド層)に対してファイナンスサービスを提供するファイナンシャル・インクルージョンを進めていますが、この考え方は、当社が1980年代に国内で女性や若者に対し、年会費無料で即日カードを発行してきた当時の思想と通底しています。当時、上場企業に長年勤める男性くらいしかクレジットカードを持つことができなかった日本で、女性、特に主婦層への金融サービス開放を実現したことは当時のファイナンシャル・インクルージョンだったと自負していますし、当社は常に、お客様を起点に、その困りごとを解決することで価値を創出してきました。2024年5月に公表した2030年に目指す姿「GLOBAL NEO FINANCE COMPANY~金融をコアとしたグローバルな総合生活サービスグループ~」は、当時提唱していた「生活総合産業」をベースに、金融を軸にグローバルでも発展していくという思いも加えた、当社のDNAを受け継ぐビジョンとなっています。
2030年に目指す事業ポートフォリオ
2030年の事業ポートフォリオのイメージは、2021年の社長就任当初から変わらず、ペイメント:ファイナンス:グローバル:新規事業が「3:3:3:1」となるイメージを持っています。一方で、新規事業の「1」については、セゾンファンデックスなどの成長めざましい関連会社の事業拡大、或いはM&Aのようなインオーガニックな成長によって「3:3:3:3」となる可能性も秘めています。ただ、新規事業に関しては、「 総合生活サービスグループ」を目指すうえでさまざまな事業に挑戦したものの、お客様のお困りごとが金融から距離のある飛び地であったためにうまくいかなかった反省点もいくつかあり、金融という軸をぶらさないことが重要だと考えていますし、今後さらに事業が多角化しても、 金融という軸さえ外れなければ、コングロマリットディスカウントは起きないと考えています。
GLOBAL NEO FINANCE COMPANYに向けて

中期経営計画の最終年度である2026年度には、事業利益1,000億円超を目指していますが、あくまで私の個人的な思いとしては、2030年度までに2,000億円の事業利益を出せる企業体に変えていきたいと考えています。
その理由の一つは、金融機関や通信キャリアなどの国内競合他社が独自の経済圏構想を打ち立てる中、緩やかなパートナーシップで「セゾン・パートナー経済圏」を形成する当社が、しっかりとした財務基盤を確立していることは、重要な選定基準になると考えるからです。国内で「稼ぐ力」があることはとても重要になってきます。そしてもう一つは、後述するように、創出した利益を株主に加えて社員にもしっかりと還元していきたいからです。
中計では4つの重点テーマを掲げています。1つ目の「国内事業の徹底的な筋肉質化」は、ペイメント事業の構造改革も進み、進捗したと評価しています。またここ数年注力してきたDXの効果も非常に大きく、ファイナンス事業を含む社内のさまざまなオペレーションやワークフローがIT化・デジタル化されペーパレス化が進んだほか、お客様と接する現場においても審査のスピードアップや報告のデジタル化など、ユーザビリティの面でも格段と向上しました。
2つ目の「各事業を加速させる銀行機能の活用と金融機能の増強」については、スルガ銀行との提携が進み、コラボレーションローンの実績数値が積み上がっているほか、人的交流も進んでいます。当社の社員がスルガ銀行の営業・審査部門に入り、銀行の手法を学ぶなど、双方にとってWin-Winの関係が築けています。2025年4月からは、ペイメント分野での連携加速に向け、人材の派遣や、当社の顧客基盤を活用したスルガ銀行口座との連携を進めるための議論がスタートしています。
3つ目の「インドを起点としたユニークなグローバル展開の進化と、国内・海外の双方向の融合」については、2024年度に全役員がインドに赴いてオペレーションやリスク管理を視察するとともに、現地メンバーとの意見交換を行いました。インド事業の成長を肌で感じられたことは大きな刺激になりましたし、本社とインド現地のメンバー間での交流を通じて相互理解がさらに深まりました。インドでのビジネスモデルの水平展開についても、中計期間中にはブラジルなどでさらに進捗できるよう、リソースを投下していきます。
4つ目の「事業戦略と連動した社員の成長と経営基盤の強化」に関しては、チャレンジする風土が強化されたと実感しています。例えば飛び級で課長職や部長職を目指す社員や、自らの環境を変えようと関係会社等への出向に手挙げして挑戦する社員も増えています。証券外務員やITパスポートなど、座学での資格取得も積極的に推奨しており、自ら学ぶ文化も醸成されつつあります。
課題認識

大きな環境変化の一つは、金利のある世界が戻ってきたことです。金利に関しては、長年のゼロ金利が常態化する中でビジネスを続けてきた当社にとっては、金利の上昇で資金調達環境が大きく変化しており、年間、数十~百数十億円のコストアップ要因になります。しかし、当社にプロパーで入社した私から見ると、これより桁が一つ違うほど大きな経営危機を乗り越えて18年前に出した最高益を上回る利益成長を遂げているわけですから、現在の強靭な経営基盤を強みに十分対応していくことができると自信を持っています。
もう一つの大きな変化が、ここ数年のAIの日進月歩での進化です。当社はデジタル化を先行して進めてきましたが、急速に新たな技術が世に広がり、AIの精度も格段に向上した今、これらの新しい技術をどのように経営に実装していくかは大きな課題です。経営政策のど真ん中にデジタルを据えるような考え方で取り込まなければ生き残っていけない。それくらいの危機感を抱いています。特に様々な部門からデータを集約し管理するコーポレート部門のDX推進は、部門ごとに課題も違い事業部に比べて実装が遅れ気味のため、データドリブンな意思決定や経営を加速したいと考えています。
また2024年度は、グローバル事業におけるインベストメント事業で、出資先の評価損計上や、海外での急な法制度の変更等によるリスクが顕在化しました。新興国ではこうした不測のリスクを踏まえて事業運営をしていくことがビジネスの肝だと感じています。
2025年度の方針
2024年度は構造改革が一段と進みましたが、2025年度は、金利ある世界への対応を進めながら、資産の見直しを図り、アセットが生み出す利益水準についても、一定の水準に達しないものはリサイクルを検討していきます。その意味では、2025年度は、どこに経営資源を集中させ、どれをやめていくのか、将来性やマーケット環境などを勘案しながら「選択と集中」を進めていきます。こうした見直しをすることが、将来の利益成長に向けた足場固めになると考えます。
組織風土と人的資本経営

また人材の多様性は、当社の取締役会を見ても明らかです。当社にプロパーで入社したのは私しかいませんし、取締役会では侃々諤々と、皆が自由に発言をする中で、多面的な見方の中から最適解を見出すことができています。
社員との対話は、ここ数年特に私が注力してきたことの一つです。経営と現場の距離を縮め、年数十回、経営課題や中期で目指す方向性などを直接私が伝える機会を設けてきました。もちろん、各担当役員や事業部長からも同じ目線で内容を伝えてもらっており、社内では経営課題や目指す方向性が共有できていると手応えを感じています。例えば、今の経営課題を問えば、誰もが「金利の上昇」と答えるほど、現場との一体感が醸成されており、これは会社の大きな強みです。
当社の事業基盤を支えているのは人材です。私は将来的に、株主に加えて社員に対する還元も、処遇の改善という視点で拡充したいと考えています。2024年度は全社員に一律100万円弱の決算賞与を支給しました。決算賞与があることで、多くの社員が業績に注目するようになっているのは良かったと思いますし、100万円という数字は社内外ともにインパクトがあったと思います。次なる施策はベースアップです。2025年の新年挨拶では、林野会長から社員に向けて「平均年収を1,000万円にしたい」という発言があったのですが、私も将来的にはその水準を実現したいと考えていますし、特に努力して頑張っている社員に厚く還元できるような制度にしたいと考えています。
ガバナンス体制の強化
当社の取締役会では、各執行役員の説明に対してさまざまな観点から指摘や質問が入り、多様なメンバーが闊達に議論をしています。2025年からは取締役会のメンバーも一部変わりましたが、取締役会の実効性は高まっていると感じます。
コーポレート・ガバナンスは、日々取り組むことが重要であり、ゴールがありません。林野CEOと私による体制については、一部の機関投資家からもご意見をいただいていますが、私としてはこの体制だからこそうまく機能している部分が大きいと感じていますし、執行は私に一任されています。当社の歴史を直接知る唯一の立場としての助言や、林野CEOだからこそ築けてきたネットワークなどから得るものも多くあり、それらを企業価値として維持していきたいと考えています。
ステークホルダーへのメッセージ
2024年度に当社が過去最高益を達成できたことは、かつてのペイメント事業一本足打法だった時代から、大きくポートフォリオ変革ができていることの表れです。しかし私は、まだ当社は成長の途上にあるという思いが強くあります。特に成長著しいグローバル事業には、無限の可能性があると期待しています。そのグローバル事業も、約10年前から準備をしてようやく今、形になってきたものです。これからの10年間は、さらに成長を加速していけると確信しています。
一方で、当社のPBRは現状1倍を割れており、解散価値を下回っています。構造改革や資本戦略を着実に進めた結果、中期経営計画で掲げた最終年度の目標である事業利益1,000億円、ROE9.5%の水準には、初年度から大きく近づくことができています。PBRについても当社の内部努力でコントロールできる部分については着実にやり遂げていくことで目標に近づいていきたいと思います。
ステークホルダーの皆様にはぜひ、長期目線で当社の今後の成長にご期待いただき、引き続き、ご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。




