リスクマネジメント

基本的な考え方

当社グループの事業は、外部環境に関わるリスク、財務面に関するリスク、業務面に関するリスクなど、さまざまなリスクにさらされています。これらのリスクは、経営の安全性及び健全性に重大な影響を与える可能性があることから、リスクマネジメントを重要な経営課題と認識し、リスクの特定・評価と、適切な対応が行えるよう体制整備に努めています。これまで対処してきた業界共通のリスクについては、継続して取り組みを行うとともに、外部環境の変化によって出現したリスクについては中長期的視点で評価・対応策を講じるなど、適切なコントロールを全社で推進していきます。

体制

さまざまなリスクについて適切に対応するために、全社的なリスクマネジメント体制を整えています。取締役会はリスクマネジメントを統括し、各種経営戦略策定にあたり中長期的なリスクの把握と管理施策状況を確認しています。また、さまざまな角度からリスクを特定するため、各部門は自部門におけるリスクの特定・評価を行うとともに、リスク統括部が全社的な情報共有を図り、適切なリスク管理を推進しています。内部監査部門は、これら各部門の業務遂行状況について監査を行い、取締役会に報告をしています。

体制図

リスクの種類と対応

リスクの顕在化の頻度と影響額から定性・定量の両面からリスク評価を行い、それらの優先順位に基づきリスク対応策を実施しています。これらの実施状況は定期的にモニタリングをし、適宜、必要な改善を図っています。
業界共通リスクおよび中期的に対応が必要なリスクには以下のようなものがあります。

業界共通のリスク

内容 対策
経済状況
  • ●国内外の経済環境(景気後退に伴う雇用環境、家計可処分所得、個人消費など)の悪化に伴う、当社グループが提供するクレジットカードやローン、信用保証および不動産担保融資などの取扱高の減少や債権回収率の下落
  • ●リース事業の主要顧客となる中小規模の企業の設備投資の減少、企業業績悪化
  • ●不動産関連事業における不動産価格の下落による販売用不動産の評価損等の計上
  • ●海外景気の下振れによる当社グループの業績及び財政状況への悪影響
  • ●RCM(リスクキャピタルマネジメント)による格付の維持に必要な事業別リスクキャピタルの算出と余剰リスクキャピタルの範囲内でのリターン最大化
  • ●経験・知識豊富な現地人材の拡充による盤石なガバナンス体制構築と強固な与信・リスク管理
資金調達
  • ●金融機関からの借入金、社債やCPの発行などの資金調達のうち、調達期間が一年以内のものが相当額あることによる流動性リスク
  • ●資金調達のうち長期化・固定化の一定割合の維持、コミットメントラインなど流動性補完枠の設定、社債や債権流動化など直接調達の実行による多様化の推進による流動性リスクの軽減
マーケットリスク
  • ●上場会社、非上場会社の株式、ベンチャー企業投資ファンド、債権、不動産および不動産ファンドなど投資資産の価値下落リスク
  • ●金利上昇時の調達金利の上昇
  • ●RCMやALMの導入と活用によるマーケットリスクの適切な管理
金融商品の減損
(貸倒引当金)
  • ●国内外の経済環境(景気後退に伴う雇用環境、家計可処分所得、個人消費など)の状況の変化による、多数の顧客に対する債権の返済がなされないリスク
  • ●継続的な債権内容の健全化と、与信限度額、信用情報管理、内部格付など与信管理に関する体制を整備・運営、債権状況モニタリングなどの与信管理体制の強化による適切な貸倒引当金計上
利息返還損失引当金
  • ●国内の当社グループにおいて利息制限法改正前に弁済を受けた利息制限法に定められた利息の上限金利を超過する部分に対する、顧客からの返還請求額の増加リスク
  • ●過去の返還実績や利息返還の請求動向も考慮し、現時点において必要とされる引当額を計上
のれんの減損
  • ●当社グループが適用するIFRSにおいて、定期的にのれんの償却が行われず将来にわたって残り続ける減損リスク
  • ●M&Aなどにより新たなのれんが発生した場合にのれんの残高が増加し続けることによる、減損処理を行った際の業績及び財政状況への悪影響
  • ●RCMによる投資限度額を設定することによる過度なリスクを取らない仕組みの設置
  • ●投資段階における買収価格の妥当性について主管部門と専任部門による審議の実施
  • ●出資後における買収時の収支計画実現に向けたフォローアップや経営環境の定期的なモニタリング実施
各種規制および
法制度の変更
  • ●会社経営に係る一般的な法令諸規則、金融関連法令諸規則の改正もしくは解釈の変更や厳格化、又は新たな法的規制適用
  • ●規制の変更などにより一定のサービスを停止せざるを得ないリスク
  • ●変更に沿った社内体制、ルール、運用の検討、整備等の実施
  • ●法令を遵守しながら、新たな規制に即したサービス開発の迅速な対応
アンチ・マネーローンダリング
  • ●マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(以下、マネロン対策)が有効に機能せず法令諸規制の違反等が発生するリスク
  • ●業務停止、制裁金等の行政処分、レピュテーションの毀損等による当社及び当社グループの業務運営、業績及び財務状況の悪化
  • ●国内外の法令諸規制の適用及びそれに基づく国内外の監督官庁による監督を受けたことによる、国内外の法令諸規制を遵守する態勢の整備
  • ●マネロン対策の更なる強化の継続的な実施
コンプライアンス
  • ●法令違反等が発生し、行政処分やレピュテーションの毀損等による当社グループの業務運営、業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスク
  • ●コンプライアンス態勢構築及び内部管理態勢の強化による、経営者のコンプライアンス意識再認識や、継続した社員教育の実施及び実施状況のモニタリングなど予防策の推進
  • ●内部通報制度の整備による法令遵守違反・経営者及び社員による不正行為、不祥事・潜在的な利益相反等の早期発見、迅速な対応

中長期で対応が必要なリスクと機会

内容 対策
大規模災害の発生 リスク
  • ●国内外の各地域における地震等の大規模な自然災害による保有資産の物理的な損害、社員への人的被害
  • ●BCPプランの策定と定期的な実効性の確認、教育、訓練の実施
  • ●オーソリゼーションシステムを関東と関西へ分散することによるクレジットカードの利用環境整備
機会
  • ●BCPプラン策定・教育による人材確保や他企業からの信頼構築、企業価値が向上
  • ●不測の事態に備えることによる社会的インフラとしての継続したサービス展開
感染症など
不測の事態発生の影響
リスク
  • ●先行き不透明な行動制限・流行動向が続くことによる景気の下振れ、企業の倒産や個人消費の減退が長期化
  • ●キャッシュレス化推進による決済手段の多様化、異業種参入などによる競争激化による新規会員獲得の減少
  • ●ペイメント事業を基盤とする経営から事業ポートフォリオを変革し「総合生活サービスグループ」への転換を図ることで、経営環境の変化に対応
  • ●「SAISON CARD Digital」を活用した非対面型の新規会員獲得モデル構築による従来と異なる顧客層へのサービス拡充
  • ●社員の健康管理や予防策の徹底
機会
  • ●成熟社会で生まれるあらゆる「困りごと」をグループ全体で適切に素早く解消することで顧客満足度向上
  • ●感染症など不測の事態による顧客心理・行動様式の変化を踏まえた事業構造転換への着手
気候変動の影響 リスク
  • ●気候変動に伴う自然災害の激甚化や生態系の変化等による地球環境や経済への重大な影響、気候変動への対応遅延などによる当社グループの信用やブランド悪化に伴う取扱高減少や資金調達コストの上昇
  • ●台風・豪雨など異常気象による顧客の家計や業績悪化に伴う貸倒コストの増加
  • ●2021年8月、代表取締役(兼)社長執行役員COOも参画するサステナビリティ推進委員会を設置し、持続可能な事業運営への取組みを強化
  • ●気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、気候変動への対応に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示を推進
  • ●SSBJ(サステナビリティ基準委員会)の開示基準公表に伴う有価証券報告書等での開示対応
  • ●利用明細書、申込書のWeb化による紙消費量の削減、「SAISON CARD Digital」によるプラスチックカードの発行削減、利用明細書の封筒窓部分にリサイクル可能な素材を使用、CO2削減を推進
    • ※利用明細書のWeb化…2024年3月現在、総会員比61%削減/封筒一通あたり500gCO2削減
    • ※申込書のWeb化…対面でのカード申込受付時の98.8%をタブレット端末で受付
  • ●当社保有のデータセンター「ユビキタスビル」における使用電力の全量をトラッキング付非化石証書を活用した実質再生可能エネルギー由来100%の電力に切り替え
機会
  • ●気候変動対策、CO2削減活動が評価されることによる企業価値向上
  • ●企業価値・知名度向上による人材確保、社員のモチベーション向上、ESGに関心の高い投資家からの評価向上など様々なステークホルダーからの信頼獲得
競争環境 リスク
  • ●規制緩和および技術の進展によるペイメント業界への異業種からの新規参入などによる競争激化
  • ●不動産ファイナンス市場の競合他社による収益性を度外視した顧客に有利な取引条件の提示やサービス提供
  • ●市況に合わせたサービス改定、DX推進によるUIUX改善などによる、マーケット及び個々のニーズに最適化された金融サービスの提供
  • ●クレジットカードをはじめとするプラスチックカードの発行に加え、スマートフォン決済や提携先アプリと連携したQRコード決済、スマートフォン完結型決済サービス「SAISON CARD Digital」の提供など、キャッシュレス社会に向けて、お客様の利便性向上を目的とした多種多様な決済プラットフォームを実現
  • ●ビジネスカードと法人関連商材のクロスセルなど法人領域の取り組み加速
  • ●お客様の利便性向上を目的とした審査スピードの向上、不動産関係会社との関係強化や、他社にはない商品・サービスの提供による差別化、新たな事業領域への進出
機会
  • ●異業種との協業による新たな事業領域や新商品・サービスの開発
  • ●利便性向上、関連会社との関係強化によるマーケットシェア拡大
主要提携先との関係 リスク
  • ●重要戦略である業務提携や資本関係を結ぶ提携先の業績悪化、提携先との業務提携条件変更や提携解消
  • ●既存提携先とのリレーション強化
  • ●多様な業種・業界のパートナーとの新規アライアンスの推進による特定の提携先に依存しないビジネスモデルの構築
機会
  • ●提携先である企業や団体との提携を通じた会員獲得やサービス商品販売チャネルの拡大・多角化、双方の顧客基盤などを活かした事業展開
海外事業展開 リスク
  • ●事業を展開する所在国の市場動向、競合会社の存在、政治、経済、法律、文化、宗教、習慣、為替、その他の様々なカントリーリスク
  • ●複数の国・地域への進出によるカントリーリスクの分散と、定期的な所在国のリスク分析
  • ●IHQ設置によるガバナンス体制強化と、定期的な所在国のリスク分析および現地関係会社の詳細なモニタリング体制の構築並びにモニタリングの実施によるリスク軽減
機会
  • ●銀行口座を保有していない、金融サービスを受けられない層が多い国・地域における既存・新規サービス展開
システムリスク
および
情報セキュリティリスク
(個人情報の漏えい等含む)
リスク
  • ●コンピュータシステムの不具合、通信回線の障害、サイバーセキュリティ上の脅威などによるシステムの機能不全、個人情報や機密情報などの漏洩や不正利用、リスクの顕在化による信頼性低下
  • ●重要なシステムのバックアップの確保など、コンティンジェンシープランの策定
  • ●「サイバーセキュリティ対応チーム」の設置による、インシデント発生時の判断・トリアージ・インシデントレスポンス等、必要な対応を迅速に実施できる体制構築
  • ●インシデント対応手順の策定や定期的な訓練など、必要な事前準備及び予防策の実施
  • ●社員の情報セキュリティ意識の向上、高度なサイバー攻撃検知が可能なシステム導入などによる被害の最小化などサイバー攻撃対応策の整備
  • ●個人情報保護法に定められる、個人情報の適切な保護措置や体制整備、プライバシーマークの取得
機会
  • ●システム等を活用した新規プロセシング事業受託先の獲得
  • ●外部パートナーとの協業による不正利用防止技術を活用した安全な決済システムの提供
事務リスクの顕在化 リスク
  • ●手作業による大量の事務処理に起因する過失や不適切な事務処理の発生リスク
  • ●重大な事務リスクが顕在化することによる損失の発生、行政処分、レピュテーションの毀損等のリスク
  • ●事務取扱マニュアルの制定、事務処理状況の定期的な点検、社員の誤謬・不正を防止し、継続した社員教育の実施及び業務実施状況のモニタリング等など予防策を講じるほか、早期発見するための内部通報制度に係る規程類の整備、運用
  • ●システム化とRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの導入による事務処理の自動化を推進
機会
  • ●提携カードやパートナーにおける事務処理代行需要の拡大
人材の育成および確保 リスク
  • ●顧客に付加価値の高いサービスを提供し、先進的な商品・サービスを開発するための、多様な人材確保ができないリスク、人材の社外流出のリスク
  • ●社員のニーズに応じた働き方が選択できる勤務体制や副業制度の整備、雇用形態の統一による公平な機会の提供、スペシャリスト・エキスパート制度など社員の能力や特徴を活かせる人事制度の採用による優秀な人材の確保
  • ●「自己啓発・自己研鑽」「不妊治療」のために活用できる休暇・休職制度の導入
  • ●アセスメントプログラム、新規事業提案制度、手挙げ選択式の研修プログラム、年代別キャリア形成セミナーなど支援制度の導入や、公募を軸とする社員希望に基づいた人員配置など長期的・多角的な育成・キャリア形成に取り組める環境整備による挑戦する文化創り
機会
  • ●デジタル人材確保による新サービス・商品開発
レピュテーションリスク リスク
  • ●当社及び当社グループに関連するネガティブな評判・風評が拡散された場合、内容の真偽に関わらず、業務運営や業績及び財政状態に及ぼすリスク
  • ●風説・風評の早期発見に努める
  • ●影響度や拡散度等の観点から適時かつ適切に対応し、影響の極小化を図る対策を実施
  • ●リスクリテラシー研修など全社員を対象としたコンプライアンス教育の実施
機会
  • ●レピュテーションマネジメントによるステークホルダーとの関係構築
  • ●消費ニーズ把握とサービス改善による新規顧客・収益拡大

取り組み

事業継続計画(BCP)

地震等の自然災害や事故等が発生した場合にも、重要業務を可能な限り継続すること、または停止した場合でも早期の復旧を図ることを目的に、当社は事業継続計画(BCP)を策定しています。
災害発生時においては、被害状況の確認・分析を行い、事業の継続に影響があると判断した場合にはBCPを発動し、迅速な重要業務の継続措置を行えるよう、緊急時の体制とそれぞれの役割、対応事項を定めています。