彼女の子どもが一人で遊んでいる姿は、寂しさでいっぱいだった6歳の頃の自分と重なった。
—お母様と和解したあとに、ユージさんは奥様と出会ってご結婚されました。そもそも結婚願望は強かったんですか?

ユージ:結婚願望はありませんでしたが、妻と出会った瞬間に「この人と結婚するだろうな」と思ったんです。たまに聞きますけど、そんな感覚が本当にあるんだということを知りました。

—そして、何度か二人で食事などに行き、数回目のデートで初めてお家に遊びに行ったそうですね。それまで奥さんに子どもがいることに、まったく気づかなかったのでしょうか?

ユージ:はい。初めて知ったのが、家に遊びに行ったその日です。僕も聞かなかったですし、こういうのって、自分からベラベラ言うことでもないから、妻も話すタイミングがなかったんだと思います。それにこっちが一目惚れして、しつこくアプローチしていたので、言い出しづらいのもあったのかなと。

初めて家に遊びに行ったら玄関で、「隠していたわけじゃないんだけど……ちょっと待ってて」と言われたので、僕は最初、部屋が散らかっているんだと思ったんです(笑)。でも部屋に入ったらリビングに子どもがいて、「私の息子です」と。一瞬でいろいろなことが頭を駆けめぐりました。

—素直にビックリしますよね。最初に思ったことは、どんなことでしたか?

ユージ:まず、旦那さんがいるかいないかをクリアにしないといけないと思い、本人に聞いたら、一人で育てていると。そしたら一人で遊んでいる息子の姿が急に、小さい頃の自分に見えてきたんです。当時彼は6歳で、僕が日本に来て悩んでいたのと同じ時期だったのもあり、勝手に「あんな悲しい気持ちになる子を、もう作りたくない」と思ってしまって。だから僕からしたら息子の存在はプラスでしかなかったんです。

 

—ユージさんの生い立ちとリンクするところがあった。

ユージ:妻といろいろ話をしたいと思って家に行ったのに、息子が気になっちゃって(笑)。とにかく遊びまくって、帰る頃に息子が「帰ってほしくない!」と。僕もこの母子と一緒にいたかったから、「どうする? 俺は帰らなくてもいいけど」と泊まらせてもらって、仕事が終わったら「帰って来ちゃった♪」と、その日から今日まで6年間、ずっと一緒に住んでいます(笑)。

—それもまたすごい話ですね。奥様はユージさんが息子さんと遊んでいる姿を見てどんなリアクションをされたんですか?

ユージ:妻にとって一番大事なのは息子ですから、息子が楽しそうにしている姿を見てうれしそうでした。だから最初は良きお兄ちゃんになろうと思ったんです。無理して父親を目指す必要はないなと。結婚してもそれは変わらなくて、「父親」は目指していません。お兄ちゃんのほうが言えることもあるし。だからいまも「お父さん」ではなく「ユージ」と呼ばれています。息子にとって僕は、お父さんの部分もお兄ちゃんの部分もどっちも持っているからいいんだと思います。
いつもは「ユージ」と呼ぶ息子が、僕の聞こえないところで「僕のお父さん」と紹介していたのは、やっぱりうれしかったですね。
—いまは中学生になった息子さんとは、とても良い関係を築いているようですね。ユージさんはポジティブな考え方で、積極的にコミュニケーションをとっている印象を受けました。

ユージ:本当のお父さんでもたまにしか帰ってこないと距離を感じて、子どもは言いたいことも言えなかったりするじゃないですか。だから血がつながっている、つながっていないは関係なくて、なるべく一緒に同じ時間を過ごすことが大切かなと。

 

出会った当時は6歳だった息子さんも中学生に。
—まさに世間でも、答えのない議論として挙げられる「生みの親」「育ての親」についてですね。

ユージ:僕からすると、そもそも「お父さん=男」は子どもを産めないから、「産みの親」には絶対になれないんですよ(笑)。極端な話、その子を愛することができる人なら親は誰でもいいと思います。だって、子どもの幸せが一番大事なのだから。

—産み育てるなかで大切なのは、血のつながりではなくて「愛情」ですもんね。

ユージ:あと、ひとり親で辛い思いをした子どもの気持ちがわかるので、息子には当時の僕が欲しかった愛情や言葉を与えたいんです。いま思えば、僕の母もシングルマザーで、家計を支えるために仕事をかけ持ちするなど大変な思いをしていたんですよね。母は少し見栄っ張りなところがあるから、周囲に「一人で子どもを立派に育ててるね」と言われたくて、みんなの前で僕を怒ったりしていた。でも、その母の姿が、周りの目を気にしているように感じてしまって、僕は心地良くなかった。だから息子と接するときには、周りの目は関係なく、息子の気持ちを最優先に考えるようにしています。

 

—お母様は反面教師でもあるのかもしれないですね。息子さんとは初対面から意気投合されていましたが、奥様と結婚してからお子様の気持ちに変化はありましたか?

ユージ:あまり変わったと感じたことはないのですが、いつも「ユージ」と呼んでいる息子に、一度だけ「お父さん」と言われたことがあるんですよ。それは小学校まで息子を車で迎えにいって、「そろそろ帰るよ!」と声をかけたときです。一緒に遊んでいた友だちが僕を見て、「あの人誰?」って息子に聞いたんです。僕は少し離れたところにいたので聞こえないと思ったのか、息子が「……あれは、僕のお父さんだよ」って答えていて。

面と向かっては呼ばれたことはないけど、友だちには「お父さん」だとアナウンスしていたので、お父さんだと思っているんだなあと。再婚などの事情がいろいろ複雑で、友だちに説明するのが億劫だからそう言っただけなのかもしれませんが、それでもやっぱり「お父さん」はうれしかったですね。それだけで、お腹いっぱいです(笑)。


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